「引き寄せの法則」という言葉を聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか?
「願えば叶う」「ポジティブシンキング」「宇宙にお願いする」……。書店にはキラキラとした装丁の、優しく語りかけるようなスピリチュアル本が溢れています。
しかし、今回ご紹介する『引き寄せの法則を全部やったら、効きすぎて人生バグりかけた話』(扶桑社 / 角由紀子 著)は、それらとは一線を画す、異質で、そして危険な一冊です。
著者は、オカルトメディア『TOCANA』の元編集長であり、YouTubeでも絶大な人気を誇る「オカルト界の女王」こと角由紀子氏。彼女が体を張り、人生を賭けて挑んだのは、「引き寄せの法則は本当に実在するのか? そして、それを極限まで実践したら人間はどうなるのか?」という壮大な人体実験でした。
この記事では、スピリチュアルの甘い罠に警鐘を鳴らしつつ、真の願望実現とは何かを問いかける本書の魅力を、ネタバレなしで徹底解説します。8000文字を超えるボリュームで、本書が示す「世界のバグ」について深掘りしていきましょう。
1. 本の内容(ネタバレなし):狂気の人体実験ドキュメント
本書は、単なる「願いを叶えるためのハウツー本」ではありません。著者が実際に世界中のあらゆる「引き寄せメソッド」を試し、その結果どうなったかを記録したドキュメンタリーであり、実践報告書です。
① 「全部やる」という狂気のアプローチ
著者のアプローチは徹底しています。一般的に知られる「イメージング」や「アファメーション」にとどまりません。彼女が手を出したのは、科学とオカルトの境界線上にあるようなメソッドの数々です。
- 脳波コントロール: ヘミシンクなどを使い、変性意識状態に入り現実を書き換える試み。
- 古代の儀式: 南米ペルーでのシャーマニズム体験(アヤワスカ等の幻覚性植物を用いた儀式)。
- 過酷な修行: 断食、瞑想、そして予言の成就率検証。
「幸せになりたい」という生ぬるい動機ではなく、「この世界の仕組み(バグ)を暴きたい」というジャーナリズム精神と知的好奇心が、彼女を突き動かしています。
② 「効きすぎ」て人生がバグる
タイトルの通り、彼女の実践は成功します。それも、怖いくらいに。
欲しいものが手に入る、会いたい人に会える、仕事が舞い込む。しかし、著者はそこで満足しません。願望が叶うスピードが加速し、偶然の一致(シンクロニシティ)が頻発しすぎた結果、現実と非現実の境目が曖昧になっていくのです。
著者はこの状態を「人生がバグる」と表現しています。まるでゲームのプログラムコードを書き換えたかのように、現実が歪み始める感覚。それは幸福感であると同時に、底知れぬ恐怖でもありました。
③ 「スピリチュアル依存」への警鐘
本書の大きなテーマの一つが、「引き寄せのダークサイド」です。願いが叶うことは、必ずしも幸せを意味しません。「もっと叶えたい」「もっとすごい奇跡を見たい」という欲望は、やがて「スピリチュアル依存症」を引き起こします。
2. なぜ「引き寄せ」は危険なのか? 図解でわかるメカニズム
ここでは、本書が提示する鋭い視点を、より深く理解できるように図解的な概念で整理します。なぜ、願いを叶えようとすればするほど、人は深みにハマってしまうのでしょうか。
ここに以下の流れを示す図を作成して入れてください
願望成就(成功体験)
↓
脳内麻薬(ドーパミン)の放出
↓
快感と全能感
↓
「もっと強い刺激(奇跡)が欲しい」という渇望
↓
依存の完成・現実逃避
「自我(エゴ)」の暴走
一般的な引き寄せ本は、「あなたの自我(エゴ)を満たすこと」を是とします。しかし、角由紀子氏は、エゴの拡大こそがバグの原因であると気づきます。
通常の引き寄せの罠
「私(エゴ)」が、「お金(対象)」を欲する → 宇宙にお願いして獲得する → 結果:エゴが肥大化し、次の欠乏感を生む。
本書が到達する視点
世界はシミュレーション(仮想現実)に近い → 「私」という意識そのものがプログラムの一部かもしれない → エゴを満たすことよりも、システムの構造自体をハッキング(俯瞰)する視点が必要。
この「メタ視点」への移行プロセスこそが、本書の真骨頂です。単なるオカルト話ではなく、現代的な意識の哲学書として読むこともできます。
3. 感想・レビュー:オカルトの皮を被った「ガチ」の哲学書
実際に読み終えて感じたのは、「これは引き寄せの入門書にして、卒業論文だ」という衝撃でした。
圧倒的なリアリティと説得力
多くのスピリチュアルリーダーは、「私はこれで幸せになりました」というキラキラした側面しか見せません。しかし、角氏は「ゲロを吐くような苦しみ」や「精神崩壊寸前の恐怖」までをも赤裸々に描写します。
泥臭く、人間臭い。だからこそ、「引き寄せの法則」というフワフワした概念が、物理的な重みを持って迫ってきます。
文体の魅力:知的でハイテンション
内容はハードですが、文章は非常に読みやすいです。角由紀子氏特有の、知的でありながらどこかユーモラスで、ハイテンションな語り口(いわゆる「角節」)が炸裂しています。難解な精神世界の用語も、彼女のフィルターを通すと「ヤバい体験談」としてエンタメに昇華されます。
最終的な「答え」への納得感
具体的な結末は伏せますが、彼女が最終的にたどり着いた境地は、驚くほどシンプルで、かつ伝統的なものでした。最新のブレインテックや海外のシャーマニズムを一周回った結果、「なぜ古来より聖人たちがそれを説いてきたのか」が、現代的な解釈でストンと腑に落ちます。
ここに以下のイメージ図を入れてください
・海の上に突き出た小さな氷山=「顕在意識(エゴ・欲望)」
・海面下の巨大な氷の塊=「潜在意識」
・さらにその奥底にある海そのもの=「集合的無意識(全体性・宇宙)」
※本書の旅は、氷山の先端から、海そのものへと意識を沈めていくプロセスであることを図示。
4. この本をおすすめしたい人・そうでない人
この本は、読者を選びます。万人受けする「優しい自己啓発書」ではありません。
おすすめしたい人
- 「引き寄せ」をやってみたが、効果がなかった人
- スピリチュアルに懐疑的な人(検証好き)
- 人生に閉塞感を感じている人
- 『マトリックス』などのSF映画や世界構造に興味がある人
おすすめしない人
- 手っ取り早く、楽してお金持ちになりたいだけの人
- 怖い話や、精神的な揺らぎが苦手な人
- 自分の信じているスピリチュアルを否定されたくない人
5. 併せて読みたい! おすすめの関連書籍
『引き寄せの法則を全部やったら〜』を読んだ後に読むと、さらに理解が深まる、あるいは違った角度から楽しめる本を紹介します。
① 『オカルト異世界ばなし』シリーズ(角由紀子 原作 / グラハム子 漫画)
角由紀子氏の実体験をコミックエッセイ化したもの。「引き寄せ本」の実践編や、日常の不思議体験が、よりポップに描かれています。本書の内容が少しハードだと感じた方や、視覚的に理解したい方に最適。笑いながらオカルトの深淵に触れられます。
② 『反応しない練習』(草薙龍瞬 著)
原始仏教の教えを元に、現代人の悩みを解決するベストセラー。角氏が本書の後半で到達する「ある境地」を、論理的かつ実用的に解説しています。「引き寄せ」のその先にある「心の平穏」を求めるなら、必読の書です。
③ 『ザ・シークレット』(ロンダ・バーン 著)
世界的な引き寄せブームの火付け役。あえて「原点」に戻ることで、角氏がいかにこの「基本」を解体し、再構築したかがよく分かります。「表の教科書」と「裏の報告書(本書)」として比較読みするのが面白いでしょう。
6. まとめ:バグった人生のその先へ
『引き寄せの法則を全部やったら、効きすぎて人生バグりかけた話』は、私たちの常識を揺さぶる劇薬のような一冊です。
「引き寄せ」とは、単に欲しいものを手に入れる技術ではありません。それは、「自分とは何か」「現実とは何か」を問い直す、意識の変革プロセスなのです。
著者は命がけの実験の末に、一つの真実にたどり着きました。その真実を知ったとき、あなたの人生もまた、良い意味で「バグり」始めるかもしれません。
もしあなたが、退屈な日常に風穴を開けたいと願うなら、ぜひこの本を手に取ってみてください。ただし、用法・用量は正しく守って。戻ってこられなくなっても、責任は取れませんから。


コメント